いつもと違う、外の風を病院に吹かせる。 それが、ホスピタル・クラウンの役目。
ホスピタル・クラウン
「ロイ」こと 山田益巳さん

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1.命令できる奴が来たぞ

 病院に入院している子どもって、立場の関係からいくと一番下なんですよね。
まずお医者さんがいて、次に看護士さん、そして親御さんがいる。
みんなの言うことを聞かなきゃいけない。
で、クラウンが来ることによって、「こいつに命令ができる」、「なんかわがままが言えるやつが来た」ってなるように心がけています。
 病室に入っていくと、小さい子は最初、(5歳くらいまでの子)何が来たのかわからないからビックリして泣いたり、固まってしまったり、ということもあります。
で、クラウンとわかるそれ以上の年齢になると、笑顔で歓迎してくれたり、照れてしまったりと、本当に反応は様々ですね。
 時々、泣き出したら止まらない小さい子や、中高生で「別にいいよ」って冷めた反応の子もいますので、そんな時は風船でプレゼントだけ作って早めに引き揚げます。
看護士さんにこれ渡しておいてくださいね、って預けたりね。
 子どもが拒否したら部屋には入らないです。
でも「握手だけしてよ」とか言って、手を差し出したりはしますけど、無理はしません。
 訪問時間はだいたい5分〜10分です。
今は6つの病院を順次ほぼ隔週で回っているんですけど、半年くらい長い入院生活をしている子は、だんだんとおしゃべりもしてくれるようになるし、また来てくれた、という感じで迎え入れてくれるようになるんです。そうすると友だち関係みたいになって、30分を超えてしまうこともあります。
 通常はペアを組んで訪問することが多いです。
クラウン2人と子どもが1人で三角形をつくり、2人のクラウンが芸を見せながら、子どもが近付ける空気をつくっていきます。
あんまり直接いくとやっぱりお互いが緊張してしまいますからね。
 イベントでのクラウンは、芸をやって見てもらう事が主な目的ですが、ホスピタル・クラウンは、マジックならマジックをやってからが始まり。
マジックをやってそこでちょっと近付いてそれから握手して、という、そこから始まっていくような気がしますね。
Clown(ピエロ)姿の山田益巳さん Clown(ピエロ)ですが、病院に行くときは濃い化粧をしません。
その理由は病院を訪れるのに、表情や心の伝わる人間に近い状態で接した方が、子どもたちとのコミュニケーションがとりやすいからだそうです。
だから、彼らはトレードマークの赤い鼻を一つ付けて子どもたちに接します。

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2.病室に風を入れる

 ホスピタル・クラウンの医療的な効果というのは僕はよくわかりません。
ただ、あまり動けない子が、この赤い鼻を触りに来るとか、握手したり、大きな声を出したり…。振ると音が出るオモチャを渡すとずっと振っている。
そうやって体が動くだけでもなんか、効果といえるのかもしれませんね。
自分としては、効果をもたらすからやる、という気持ちはあまりなくて、パフォーマンスをやりに行って、ちょっと子どもの気持ちをほぐせたらいいなという気持ちなんです。
 赤ちゃんの部屋にも寝たきりで反応が出せない子の部屋にも行きます。
赤ちゃんの部屋ってまだ何もないんですよね。
そういうときに風船で何か作って置いていくとちょっとした彩りにります。
赤ちゃんも目で追ったりして。それでお母さんによく喜ばれますよ。
寝たままで意識のない子には、なるべく耳元でちょっとでも声をかけるようにしています。
それでお母さんや付添の方にちょっとマジック等をやってみせたりします。
 ホスピタル・クラウンとして、協会から言われたのは、「外の風を病院にちょっと吹き込む」ということ。
何がなんでも笑わせる、というのはなくて、軽い気持ちでいこうと。
他人が入ると空気がまた変わるんじゃないかということですね。
 でも、子どもさんがこんなにも笑ったのを初めて見た、というお母さんの話を聞くと多少は力になったのかなと思うし、退院するときに「ありがとうね」とお手紙をもらったりする時もあります。
 やっぱり退院するんだ、って聞くときが一番嬉しいですね。
 僕が所属する協会のホスピタル・クラウンは40名くらいです。
でも、岐阜の病院にも個人などで活動されている方はいらっしゃるんじゃないかな。
クラウンじゃなくても腹話術とかボランティアの人はいっぱいいると思うし。
そういう人とちょっと違うところが出せればいいな、というのはありますね。
さっき言った、子どもの下に入り、子どもが命令できる立場になれるのは。
赤い鼻をつけたクラウンとは友だちになりやすいんじゃないですかね。
(岐阜市在住)
ホスピタル・クラウンの山田益巳さん あまりハデにならず、病院の空気を変えるくらいの、日常とは違う服装を心がける。
可愛い帽子にはタケコプターがついている。
赤い鼻はトレードマークだ。

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3.≪ホスピタル・クラウンとは≫

 「ホスピタル・クラウン」の発祥は、アメリカ。
1980年代に、ニューヨークのビッグアップルサーカス、マイケル・クリステンセンにより始まりました。
この活動は全米に広がり、やがて国際的に拡大していきました。
 笑いが身体の免疫力を上げるのなら、健康維持にはもちろん病気の身体にも良いということになります。
そこでこの『笑い』を病院にも届けようとする活動が、「ホスピタル・クラウン」というわけです。
 入院生活は決して楽しいものではなく、患者本人ばかりかその家族の負担、ストレスも大きいものです。
病院は、病気を治すことが目的の場所がゆえ、多くの制限もやむを得ません。
中には、仕事にユーモアを取り入れて患者に接する医師・看護士もいますが、やはり業務の範囲内では限られます。
 そこで、クラウン(道化師)の病院訪問が生まれてきたと考えられます。
ホスピタル・クラウンは、専門の教育を受けたクラウンが病院内での知識や衛生面を理解したうえで病室を訪問しています。
 通常のクラウンパフォーンマンスと、病院内での活動には違いがあります。
  • 必ず消毒をしてから入室する。
  • 道具は常に清潔にする。
  • 一度床に落ちた物は使えないので、落ちる可能性の高い道具は使わない。
  • 医療機器などに引っ掛からないよう、大袈裟な衣装・クラウン独特の大きな靴は着用しない。
  • クラウンからよりも、患者からの発信を受ける側になる。
などなど、この他にも気を配るところは多々あります。
 欧米諸国などクラウン先進国においては、クラウンはサーカスや遊園地でショーを魅せるだけでなく、さまざまなところで活躍しています。
その活動の一つに「ケアリング・クラウン」という文化があります。
それは、障害者施設、老人ホーム、ホスピス、病院、被災地などの活動です。
平日病院を訪問しています。
エントランスやプレールームでショーをするだけでなく、毎週、または隔週、病院内に入って、クラウンの笑いや楽しさで子供を中心とした長期療養の患者の創造性をふくらまし、能動性を引き出し社会性を取り戻すお手伝いをします。
<「NPO法人 日本ホスピタル・クラウン協会」HPより>
 ほかにも、クリニクラウン(臨床道化師)、ケアリングクラウン(病院以外にも訪問)などがあります。
公開日:2009年11月25日
最終更新日:2009年11月25日

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