バリアフリーだよ ぐー・ちょき・ぱー
ボーダレス社会をめざして(15)
伊藤佐代子

1.心が通う

 「子育てが楽しくない。子どもがかわいく思えない。つい手をあげてしまう。
…自分は母親になってはいけない人間だったのではないかと悩んできましたが、みんな同じなんだと知りほっとしました。」
私が以前講演をした後に寄せられた感想文です。講演で正直に
「私は息子を叩いたことがあります。 小さい頃はかわいいと思いませんでした。」と話しました。
 自閉症の子どもの接し方という本には、たいてい自閉症の子に怒ってはいけない、褒めなさい、叩いてはいけないと書いてあります。
皆さんそれを読んで自分が叩いてしまったりすると自己嫌悪に陥ったり、母親失格と自分を責めてしまうのです。
私も小さい頃の息子とは「ありがとう」「ごめんね」というような気持ちのキャッチボールができずよく怒っていました。
気持ちのフィードバックのない子どもといると とても辛いのが本音です。
感情がわからない。
うれしい」ということはどういう事なのか全然わからなく、言葉の教室で嬉しくなることをしてもらい、「これが“うれしい!”なんだよ」と教えてもらっていたのを思い出します。
感情がわからない子どもが「ありがとう」という様なことを言うのは難しいでしょう。
星たちしかし、私はこんなことで救われました。
以前住んでいた所では、夜チャルメラの音を流しながらラーメン屋さんが通っていました。
普段はチャルメラの音を怖がるのですが、ある晩ラーメンを食べたいという仕草をしたので、玄関で息子がどんぶりを一つ手に持ち、遠くから聞こえるチャルメラの音が近づいてくるのを一緒に待ちました。
玄関のアプローチに二人並んで座って待っていました。
この時だけはどういう訳か多動の子が動きもせずジーと待っていました。
今でも思い出します。
同じ目的で、同じ時間を共有し、待つ
こんな些細な事が、今までの苦しかった思いを簡単に流し去ってくれる程、快いものであるという事を知りました。
初めて心が通い合ったと感じました。
幸せなひと時でした。
一生忘れません あの光景、あの感情…本当に救われました。

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2.いとうさよこ●プロフィール

 伊藤淳司の母、岐阜障害者就業・生活支援センターの支援ワーカーをした後、NPO法人オープンハウスCANの理事長。
地域で暮らす障がいのある方の生活支援や障がいのある方と書道を楽しんでいる。
公開日:2009年12月1日
最終更新日:2009年12月1日

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